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[第4号 2012/02/01] 般若心経に出てくる仏教要語 その二・三世諸仏
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[INDEX] 般若心経に出てくる仏教要語 その二・三世諸仏
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【1】三世諸仏(さんぜ・しょぶつ)
【2】過去七仏(かこ・しちぶつ)
【3】未来仏(みらいぶつ)
【4】三千仏(さんぜんぶつ)
【5】永遠の釈尊
【6】三世十方一切諸仏(さんぜ・じゅっぽう・いっさい・しょぶつ)
【7】仏さまとの出会い
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[1]:三世諸仏
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前回のメルマガの付録に「三世諸仏」とは、過去の仏、未来の仏、
そして現在の仏、すべての仏という意味であることを指摘し、
それではお釈迦さまは過去・未来・現在のいずれの仏さまなのでしょうか、
という問いかけを行いました。
そしてその答えは近日中にと記しておきましたが、いまだ返答できない
ままとなっています。
ご迷惑をお掛けしましたことお詫び申し上げ、ここでその解答を考えて
みることにいたします。
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[2]:過去七仏
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お釈迦さまについて、まず指摘されるべきは、インド・ネパールに生まれ
られた、人類の知的遺産としての偉大な人物であるということです。
したがってお釈迦さま(釈尊)は、すでに入滅(にゅうめつ)された過去の
仏さまで、その生存年代は、こんにちの日本では、前463?前383頃と紹介
されることが通例です。
また、お釈迦さまご自身は、自らがさとる以前にも複数の仏たちがいた、
という考え方を持っておられたようです。
これは、お釈迦さまの悟った縁起(えんぎ)の真理が過去の諸仏によっても
悟られていた永遠の理法(りほう)である(「如来方が[この世に]出ようと、
如来方が出まいと、この[縁起の法]は諸法の法性として存在する」)という
ことを意味しています。
さとりとは、もちろん発明ではなく、発見、気付き、目覚めであるという
ことですね。
お釈迦さま(釈迦牟尼仏)とそれ以前に出現した六仏を総称して「過去七仏」
といいます。そのお名前は以下の通りです。
(1)毘婆尸(びばし)、(2) 尸棄(しき)、(3) 毘舎浮(びしゃぶ)、
(4) 拘留孫(くるそん)、(5) 拘那含(くなごん)、(6) 迦葉(かしょう)、そして、
われらが(7)釈迦牟尼(しゃかむに)です。
このようにお釈迦さまは過去の仏さまですが、私たちにとっては最も身近な、
直近の仏さまなのです。
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[3]:未来仏
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仏さまの存在が過去にさかのぼれるとすると、未来にも仏さまの出現が
期待されるのが、ものの道理です。
釈尊に次いで誕生するとされる仏さまの名は「弥勒(みろく)」といいます。
弥勒如来の出現はいまから56億7千万年後とされています。その計算方法は
次のようなものです。
弥勒菩薩はいま欲界(よっかい)第四天の覩史多(とした)天の内院に住んで
います。天界は人間界よりも時間の経過が緩やかなようで、人間界の400年
が覩史多天での1日とされます。したがって、400年×360=144,000年。
さらに覩史多天での弥勒菩薩の寿命が4,000歳であるので、
144,000年×4,000=576,000,000年(5億6700万年)となるのです。
あらっ、56億7千万年とは一桁間違ってしまったのでしょうか。
ご存じの方はお知らせください。
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[4]:三千仏
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もう少し大きな枠組みで仏さまの系譜を捉える考え方もあります。
それは過去荘厳劫(しょうごんこう)の人中尊(にんちゅうそん)仏から
金剛王(こんごうおう)仏にいたる千仏、現在賢劫(けんごう)の拘那含仏から
楼至(ろうし)仏にいたる千仏、未来星宿劫(しょうしゅくこう)の
竜威(りゅうい)仏から威厳(いごん)仏にいたる千仏として、三千仏を数える
仕方です。
各寺院では十二月になると、一年間の懺悔(ざんげ)滅罪(めつざい)を願って、
三千仏のお名前を一仏、一仏お唱えしながら、五体投地(ごたいとうち)という
礼拝を行う「仏名会」(ぶつみょうえ)という法会が行われます。
私たちも、毎年、大津の石山寺での仏名会に参加させていただいております。
この考え方では、お釈迦さまは過去の仏に属するのではなく、過去七仏の
第五番目の拘那含仏が現在賢劫の第一番目の仏に登場しているのですから、
お釈迦さまも、その次の弥勒さまもともに、現在賢劫の仏さまのひとりと
なるのです。
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[5]:永遠の釈尊
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お釈迦さまは、かつて人間として八十歳のご生涯を送られました。
このような歴史的な見方に対して、お釈迦さまを永遠の仏さまとする、
いわば宗教的な捉え方が『法華経(ほけきょう)』にあります。
それによれば、お釈迦さまは現在も活動されており、信仰篤き者は釈尊に
見(まみ)えることができると語られています。
姿は見えなくとも、お釈迦さまはいまも生き続けている。このような見方は、
私たちに真実の仏とは何かを考えさせるのに充分です。
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[6]:三世十方一切諸仏
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お釈迦さま、過去の諸仏、未来の諸仏と時間的に多くの仏さまの存在が
知られますが、空間的な多仏思想も大乗仏教になって誕生しました。
すなわち、西方・極楽浄土(ごくらく・じょうど)の阿弥陀(あみだ)仏、
東方・浄瑠璃光土(じょうるりこうど)の薬師如来(やくしにょらい)などが
その代表であり、東西南北の四方に、四惟(しい. 四隅のこと)、上下を
加えた十方には、たとえば夜空に輝く星のように、数多くの仏さまが、
それぞれの国土においていま現在も説法、活動していると考えられるように
なりました。
またこれら多くの仏国土からはすぐれた菩薩が派遣され、私たちの住む
この娑婆世界において救済活動を行っているとの信仰もあり、加えて、
将来さとりを開き、自らの仏国土を建立するために、この娑婆世界において
菩薩行を行っている無名の菩薩方も多くいるはずです。
このような考え方を「三世十方一切諸仏」と表現します。
このように私たちは、多くの仏さま、菩薩さまに囲まれて、今を生きて
いるのです。
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[7]:仏さまとの出会い
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お釈迦さまは過去・未来・現在のいずれの仏さまなのでしょうか、という
問いの返答として、期せずして、長い解答例となってしまいました。
私たちは、お釈迦さまをはじめ、仏さま、菩薩さまの存在を身近に感じながら
生活することができます。
仏さま、菩薩さまとの出会いは、日々お付き合いするお人との触れ合を通して、
自らの心に生じるのです。
それは私にとっては、自らをしかり、反省を促がす場合がほとんどですが、
それによって自らの心根が浄化されていくのが感じられ、日々の喜びと
なっているのです。
(高田良海)